superleggera

ロードバイクを溺愛するオトコの自転車雑学帳

新海誠監督作品上映会に行ってきた!

こんにちは! あら50りっぷです。

 

週末は雨プロになるのが濃厚だったため、かねてから行きたいと思っていた調布シネマフェスティバル2020に家内と二人で行ってみることにしました。
目的は『新海誠監督作品上映会』です。

f:id:keithbike:20200309104627j:plain

 『天気の子』が「第2回映画のまち調布賞」作品賞を受賞したことを記念して、新海誠監督の過去作品3本『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』を続けて鑑賞、さらに新海誠監督と二人三脚で、数々の名作を生み出してきた川口典孝プロデューサーによるトークショー付きと盛りだくさんの企画です。

https://chofucinemafestival.com/contents/13083

 

日曜日の朝早めに車で出発し、近くでモーニングを食べてから現地入り。30分前にはそれほど集まっていなかったグリーンホールも、開始前にはぞくぞくと座席の2/3ほどが埋まっていきました。わたしたちもちろん夫婦二人で特等席を確保。スケジュールは結構ゆるゆるでこんな感じ。

10:30 ~
雲のむこう、約束の場所』(2004/91分)
12:30 ~
秒速5センチメートル』(2007/63分)
    ★上映後、川口典孝プロデュ―サー、土居伸彰氏によるトークショー
15:30 ~
星を追う子ども』(2011/116分)

 

まずは簡単に作品解説を引用すると、、、

f:id:keithbike:20200309102635j:plain
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

f:id:keithbike:20200309105001j:plain©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

雲のむこう、約束の場所 】2004年公開
 日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。青森の少年・ヒロキとタクヤは、ユニオン占領下の北海道にそびえる謎の巨大な「塔」まで飛ぼうと、自力で小型飛行機“ヴェラシーラ”を組み立てていた。二人は憧れの少女・サユリとある約束をするが、中学三年の夏、サユリは突然転校してしまう。三年後、ヒロキはサユリがあの夏からずっと原因不明の病により眠り続けたままなのだということを知る。サユリを永遠の眠りから救おうと決意し、タクヤに協力を求めるヒロキだったが・・・


監督・脚本・絵コンテ:新海誠
キャラクターデザイン・作画監督:田澤潮 美術:丹治匠、新海誠 
音楽:天門声の出演:藤沢浩紀(ヒロキ):吉岡秀隆、白川拓也(タクヤ):萩原聖人
沢渡佐由理(サユリ):南里侑香 ほか

 

f:id:keithbike:20200309102650j:plain
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

秒速5センチメートル 】2007年公開
 小学生のタカキとアカリは、特別な想いを抱きあう中。しかし卒業と同時に、アカリの引越しにより離れ離れになってしまう。中学生になり文通を重ねる2人だが、今度はタカキも鹿児島への転校が決まる。引越す前にアカリに会おうと、大雪の中タカキはアカリの元へ向かうが…。時は過ぎ、種子島で高校3年生になったタカキは、同じクラスのカナエに好意を寄せられながらも、ずっと遠くを見つめていた。カナエにとってタカキは、一番身近で、遠い憧れだった。やがて東京で社会人になったタカキは、仕事に追われ日々輝きを失っていく街並みを前に、忘れかけたあの頃の記憶に想いを巡らせる。

監督・脚本・絵コンテ:新海誠
キャラクターデザイン・作画監督:西村貴世 美術:丹治匠、馬島亮子、新海誠 
音楽:天門
主題歌:「One more time, One more chance山崎まさよし
声の出演:
遠野貴樹(タカキ):水橋研二、篠原明里(アカリ):近藤好美尾上綾華
澄田花苗(カナエ):花村怜美 ほか

 

f:id:keithbike:20110224181653j:plain
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

星を追う子ども 】2011年公開
 ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄。 その唄を忘れられない少女アスナは、地下世界アガルタから来たという少年シュンに出会う。2人は心を通わせるも、少年は突然姿を消してしまう。「もう一度あの人に会いたい」そう願うアスナの前にシュンと瓜二つの少年シンと、妻との再会を切望しアガルタを探す教師モリサキが現れる。 そこに開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る―。

監督・脚本・絵コンテ:新海誠
キャラクターデザイン・作画監督:西村貴世 美術:丹治匠 音楽:天門
主題歌:「Hello Goodbye & Hello」熊木杏里
声の出演:
渡瀬 明日菜(アスナ):金元寿子、シン/シュン・クァーナン・プラエセス:入野自由
森崎竜司(モリサキ):井上和彦 ほか

 

f:id:keithbike:20200309111113j:plain

そしてトークショーは、コミックス・ウェーブ・フィルム(CWF)代表取締役であり、映画プロデューサーの川口典孝氏。新海誠監督を見出し、二人三脚で彼の作品をここまで大きく世界に知らしめた敏腕プロデューサーです。

 

*****

 

新海監督作品との邂逅は今から13年前、『秒速5センチメートル』を劇場で観たあの瞬間からはじまりました。『秒速』公開当時に、伝説のミニシアターであるシネマライズ(渋谷)に2度も続けて通ったのを思い出しました。1度目は一人で、2度目は奥さんを連れて、、、。映画館でしか手に入れらなかった限定ポストカードも、DVDパッケージもぜんぶ購入しました。

f:id:keithbike:20160107211817j:plain

f:id:keithbike:20160107212525j:plain

f:id:keithbike:20160107220817j:plain
この小さく暗い映画館の席で、ぼくにとっての新海ワールドが始まった


雲のむこう、約束の場所』はまだレンタルビデオ全盛の時代に、わが家の小さなテレビで観ましたし、『星を追う子ども』は劇場で観ています。
ですから「何をいまさら」と言われれば確かにいまさらなのですが、、、新海誠ファンを語る自分にとって今回の映画祭は忘れられない経験になったのです。


実はこれまで新海作品を連続して観たことは一度もありませんでした。すべての映画を観てはきたものの、一作品毎だったのです。ですからその作品のメインテーマやシナリオの妙を愛でることはできましたが、今回はじめて、2004年以来、新海誠監督が何を意識し、何を望んで作品を作りつづけてきたのか、その想いの片鱗に触れることができたのです。

*****

 やばいな、、、

このペースで書き続けると収集つかないくらいの言葉で溢れてしまいそうな気がします。ですから今回は本当に言いたいことだけに絞って書くことにします。

わたしが感じ取った新海誠監督の想いの片鱗

1、愛する一人の人を救うか? それとも世界を救うか? 究極の二者択一

このテーマが旧作品からずっと一貫して紡がれてきたことに気づいていませんでした。合理的な大人が正義を語れば、「たった一人の命よりも世界を救うこと」が最善だと言うでしょうが、映画に登場する中学生・高校生、そして彼らの心と同期する若者たちにとっての「世界」は「一人の愛する人」の存在であることを監督が強く意識して描いておられること。大人にとっての難題は、若者らにとっては迷いようのない選択なのです。この潔さは羨ましいとさえ思います。『雲のむこう、約束の場所』ではサユリを永遠の眠りから覚まそうとするヒロキの一途な想いであり、『星を追うこども』ではシュンに生き返ってほしいと願うアスナの想いなのです。

この大人と若者の意識の違いは、埋めようのない大きな心の溝なのだと気付かされました。自分はいったいどっち側にいるのだろう?

 

2、それでも世界はまわりつづける(人生はつづいていく)


新海ワールドのキーワードのひとつは「喪失感」。これはどの作品の中にも見いだすことができます。「別れ」は誰にでもやってきます。どんなに愛していた人とも最後には別離を経験することになります。新海監督はこの「喪失感」の只中にあって身動きできないでいる人に向かい、キャストの声を借りて語りかけるのです。「大丈夫、きみはひとりでも生きていけるよ」と。直近の作品こそハッピーエンドで終えるパターンが多いのですが、初期の作品は別離を受け入れ、強く生きていく主人公が描かれているものが多いように感じます。『秒速5センチメートル』は全ての短編で別離が描かれていますし、『星を追うこども』ではアスナやモリサキ先生も最後には「別離」を受け入れて前進するのです。たとえ悲しみの極みに遭遇したとしても、さくらの舞う春は必ず訪れる(秒速)し、時間も進み続けていくのです(星追)。
『星を追うこども』のキャッチコピーがまさにその事実を物語っていますよね。

(人生)・・・それは、 ”さよなら” を言うための旅

 

3、わたしたちが日々経験するできごとは、果てしない宇宙(大空)のもとでは信じられないほど小さな1コマに過ぎない


新海ワールドのもうひとつのキーワードが「どこまでも果てしない空の碧」。吸い込まれそうな空の映像に完全に心を奪われてしまいますが、毎回この大空を飛びまわる種類の異なる「鳥」が描かれていることにお気づきでしょうか?これこそが「宇宙の目線」とも呼ぶべき俯瞰の目線です。わたしたちの周りでは日々いろいろな出来事が起こり、それに心を乱されてしまうことが多いわけですが、これらを宇宙の目線でみたならば信じられないくらい小さな1コマに過ぎないと知るのです。人の営みは(ものすごく重要で深いものですが)わたしたちが過信しているようには、つまり宇宙があなたやわたしを中心に回っているのではないことを教えてくれます。監督が描く、どこまでも碧い大空の映像を見る度に、わたしの目線は大宇宙へと引き上げられるのです。

 

4、新しい作品の名シーンへのステップが垣間見える


『君の名は』や『天気の子』の最も印象的なシーン。その場面と同じ構図や光源を伴うシーンが旧作品のなかにも散りばめられていたことに初めて気が付きました。
雲のむこう、約束の場所』には時空を超えた二人が手をつなぐことによって互いの存在に気づくシーンが登場し、『君の名は』の山頂での名シーンを彷彿とさせます。この山頂ロケーションもまた『星を追うこども』に登場する世界の果て「フィニス・テラ」がまさにそのものです。わたしたち素人は、映画監督は全く違った作品を作りたくなるのでは? と想像してしまいますが、過去作品の宝石のようなシーンが、最新作品のなかで「あっ!」と驚くべきタイミングで完成形として登場するのは得も言えぬ喜びであり、お涙モノです。(わたしは遡って観ることでそれに気づきましたが・・・)


秒速5センチメートル』のセリフを借りるならば、ぼくたちの前に横たわる茫漠とした時の流れを貫いて、全ての作品がひとつの線上に繋げられていたという事実に、言葉にならないほど心が震えた瞬間だったのです。まだまだ新海ワールドからは抜け出せそうもありません。 

 

「君の名は」2016年公開   時空を超えて二人が出会う名シーン

f:id:keithbike:20151031165026j:plain
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films 

「天気の子」2019年公開    天空で心を通わせる二人の名シーン

f:id:keithbike:20200309103404j:plain
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films